スペイン蹴球放浪記・伍
2003年3月19日UEFAチャンピオンズリーグ・バレンシアvsアーセナル観戦記


チャンピオンズリーグ、負けはもちろん引き分けでも駄目、勝たなきゃ上に上がれないという最高の緊迫状態での一戦。この日、3月19日というのはよりにもよってバレンシア最大の祭・Las Fallas(火祭り)のクライマックスの日でもありました。ただでさえ観光客だらけなのに、観光ついでに試合を見に来るアーセナルファンも多いらしく、バレンシアは人工飽和状態。で、数日前からアーセナルユニを着てスキンヘッドな「いかにも・・・」って感じのイギリス人がアイリッシュバーに男くさーくたむろしてガハガハ笑ってたりして「あれが噂のフーリガンってやつ・・・?」と怯えたり。
Las Fallas中のバレンシアはすごい状態です。街中には張り子の巨大な人形が置かれているし(あとですべて燃やすのです)、屋台だらけだし、そこら中でいきなり爆竹や花火を始めたりするのでたまったもんじゃありません。そんな混乱を極めた街をすり抜け、一路メスタージャへ。

(余談ですがその日メスタージャ付近には何故か靴や踏みつけられた服やトマトが散らばってました。明らかに乱闘・暴動のあと。何があったんだ・・・怖

座席を登って見えたのは、ピッチの上に広げられていた、大きなあのUEFAチャンピオンズリーグの、星柄のサッカーボールのマーク。妙に感動を覚えました。ああ、来たなあ、という。

この一週間前、バレンシアはキリさんのPKでアヤックスとアウェイで1-1と分け、キリさんは一躍スター☆☆☆。 新聞1面はキリさんだし、2面も3面もキリさん。うえっへっへ、ああ天国。と思っていたんですが、3月16日、リガのビルバオ戦。翌日の新聞にはなんと担架に乗せられて顔を両手で覆うキリさんの写真が・・・。見出しは『キリはLesionで2、3週間を要する』・・・と。私は現実から顔を背けるのが得意なので「Lesionってなんだろう・・・スペイン語わかんな〜い・・・ひょっとしてレッスンのことかなー・・・ウヘヘ、レッスンが必要なキリさん萌!(虚ろな目で)」とか無理のありすぎる現実逃避をしながら、怖くて辞書がひけず。そしてその夜やっと恐る恐る調べて見たら、案の定、「Lesion=怪我」。治ったばっかりなのに!!がっくり。萎。でもいいんだ・・・チャンピオンズリーグだから・・・キリさん抜きでも楽しめるはず・・・

・・・と悶々思い悩んでいたんですが、やっぱりチャンピオンズリーグって特別なんだなあ〜観に来れて本当に良かったな〜とUEFAのマークを見てそう思いました。選手入場曲はもちろんあれ。スーパーサッカーとかでも使ってる、チャ〜ンピヨ〜ン、パパララ〜♪(←心の耳で聞いてください)ってやつで、「ああ本場だよコレ!」とさらに感動。アーセナル選手に対するブーイングもひときわ。そのとき2列ほど前方のオジサンがなんだか怪しい紫色のスーパーボールぐらいの球に火をつけたら、そこからもくもくと紫の煙が!!ひょっとしてこれがスモークってやつですか!わあ、これぞ欧州サッカーの醍醐味ってか、側でやられるとマジでけむい!やめてくれ!!周囲のひとも咳き込んでて、かなり苦しい一角でした。(翌日の新聞を見たら、そのとき私の下の階でやっていた人文字の写真があったんですが、私がいたあたりは煙で包まれていた・・・)しかも苦しくてバレンシアの選手が出てきたときよくわからなかったyo・・・オヤジ恨む。

私は孤独な旅人なのでひとりで見に行ったんですが、周囲は何故かみんな知り合い同士っぽいんだよね。おじさんも若者も。サッカー友達なのかなぁ。「やあ〜今日のスタメンはどんな感じ?」とかみんな話まくってる。そして今回、隣のお兄ちゃんがなんだかいい人で、やたら気を使ってくれました。お兄ちゃんはヒマワリの種をバリバリ食いながらも、キックオフのホイッスルと同時に胸で十字をきって選手に向かって投げキッス!ああもう、胸キュンっすね!チームを愛しちゃってんだよな!こういうとこが好きなんだよ!

私はプレミアにはちっとも詳しくないんですが、アーセナルならピレス、アンリ、リュングベリ、キャンベル、ジルベルト・シルバなどとそうそうたるメンバーがそろってるので、まあ意外とわかりました。しかも、今さら言うべきことでもないんですが、ほんとにうまいの。出だしはピレス、アンリ、リュングベリの3人のパス回しが速くて華麗すぎて、バレンシアは押され気味。アーセナルファンになっちゃうかもとグラグラさせられました。もう、ほんと。あれがプロの味。垂涎。

そのとき驚いたのが、「ブーイングマシーン」とでも呼びましょうか。アーセナルが押し気味になってバレンシアの観衆が不安になってくると、後ろから異様に大きなブーイングが。私結構後ろの方の席なのに誰だよ、と思いきや、スピーカーでした・・・スタジアムでわざわざブーイング放送してるんですよ。このやらせ、すごくないすか?どっかで録音しておくわけ?その後もこの人工ブーイングは幾度となく流されました・・・みなさん、テレビで聞こえるバレンシアの大ブーイングはこれかもしれませんよ・・・
あと惜しかったりすると「ウイ!」っていう掛け声も放送されてました。
メスタージャ・ザ・やらせ。

それでもバレンシアは決して不調というわけではなく、アイマールがだんだん輝きはじめてきました。みんなが「パブリートォ!!」と叫んでました。(パブロの愛称ね。「パブロちゃぁん!」て感じか←キモ)
それでもアーセナルはディフェンス固いしとにかく前線でパスがよくまわるしで、やっぱりなんだか不安になってきた・・・と思った前半31分、アイマールの絶妙鬼畜スルーパスから、飛び込んできた選手がゴール!まっすぐネットに刺さるボール。一気に熱狂の渦といった感じになるメスタージャ。ああもう今のゴール誰だよ!!放送も歓声で聴こえないしわかんねーよ!!でもいいやもうアイマールが鬼畜だからいいや!あのゴールは、あのパスは一生忘れんってくらい目に焼きつきましたよ。(翌日調べたらカリューでした)まあ旅の恥はかきすてて大喜びしてしまったので、隣の兄ちゃんが「バレンシア好きなのか−」とか言って来る。好きじゃなかったらこんなとこにはいません。日本でおとなしくしてるよ。とりあえず瞬間的な友情が芽生えたのでガツッとこぶしを合わせてみました。

ハーフタイム−。
今日はブラスバンドはいないようで、代わりに場内にはステレオで音楽が。まず流れたのが、全世界で大ヒットしたスペイン3人娘ラス・ケチャップスの「アセレヘ」。その場であの振り付けを踊り出すひと続出。さすが。これがスペインか・・・
ハーフタイムくらいからだんだんとFallasのための花火が始まる時間だったので、マンション12階に相当する高さのメスタージャ3階からは一度に5ケ所くらいから花火が上がるのが見えました。後半中ずっとそうで、上を見ればあちこちから花火が、下を見ればチャンピオンズリーグが。ここって天国?と本気で思いました。

後半開始。隣の兄ちゃんはここでもやっぱり十字をきってチームに投げキス。
まあバレンシアもいいんですが、せっかくなのでアーセナルもすこし。とりあえずベンゲル萌え〜。スーツ萌え〜。「父親にしたい監督」ナンバーワンです。あとリュングベリがかわいい。天然パンク野郎大好き。ピレスはやっぱりオットコマエー!でした。

そしてまあ1点取られて黙っているア−セナルではなく、後半早々の49分、ピレスのスルーパスがアンリへ、アンリのシュートはボールがスルッという感じでカニの脇を通り抜けてしまってゴール・・・(カリューはわからなかったけどアンリはこの眼でしかと見たよ・・・てか1点目はアイマールのパスが目立ちすぎで・・・)。めちゃくちゃ悔しそうなカニ。沈黙に包まれるメスタージャ。ただ一部でイギリス人たちが大喜び。
隣の兄ちゃんは「こういうときもあるさ・・・」とかなんとか言っている。

しかし試合はこれでさらにヒートアップです。
そして57分、ビセンテのクロスからカリュ−がヘッドで2点目!ギャハ−!観客総立ち!興奮してわけもわからず周囲のひとと抱き合いました・・・喜びの輪に入れてもらいました・・・てか私みたいな得体のしれないアジア人の旅人を受け入れてくれてほんといいひと達だった。サッカー好きって素晴らしいね!ウ〜イ!ウ〜イ!(←意味不明のかけ声)
私はキリ熱愛なのでライバルのビセンテはあまり認めたくなかったんですが、これはすごかった。ていうか、この試合のビセンテはすごかった。がんばってた。ビセンテはどこか打たれ弱いイメージがあったんですが一気に払拭されましたよ・・・。

それから拮抗した試合状況が続き、しばらくして、なんとカニが負傷退場。倒れたままのカニに、メスタージャは不穏な空気に。頭から血が流れているような・・・顔は!顔は大丈夫か!?
結局それほど大事には至らなかったようですけどマジで心配しました・・・だってキリさんもケガ続きなのにカニまで・・・となったらこの先の試合もどうなるのかと。

しかしこれで不安になるかと思えば、カニがいなくなってから逆に、不思議と、もう負ける気がしませんでした。1点差で緊迫状態ではあったけど、絶対点は入れさせない!みたいな気迫をディフェンスに感じました。カニの犠牲で逆に燃えてしまったような。アーセナルの華麗な攻撃も、アジャラさんやカルボーニが泥臭くはね返してました。終了に近づくともうバレンシア勝利の歌、みたいのをみんなが歌いはじめて、あとはホイッスルを待つだけ。

そして、試合終了!決勝リーグ進出決定で、みんな大喜び。普段はわりとあっさり帰ってしまう選手も、観客にあいさつしたりしていました。逆にアーセナルは優位な立場だったのにこれで決勝リーグには進めないわけで、がっくりしたまま早々と引き上げていってしまいました。

帰りは、例の長い螺旋階段ではみんなが勝利の歌を歌っているし、路上では車がみんなクラクションで「パ・パ・パパパ・パパパパ・パパ」とリズムを取りながら走っていてものすごくうるさいし、祭のテンションも加わってもうすごかったです。幸いイギリス人は暴れていませんでした・・・

そしてその後はLas Fallasもクライマックスに突入、市街地で巨大な張り子の人形を燃やすイベントや爆竹や花火が午前2時くらいまで続き、バレンシアの祭モードは最高潮。もう本当に楽しかったです!チャンピオンズリーグは特別、何が特別かわからないけどやはり特別なのだとあの空気に強く感じました。また絶対いつかナマで見たい、そう思いました。

翌日新聞。

カリューの「あんたが大将!」
Marcaのマークによく見るとチャンピオンズリーグの
星柄のボールがついてる


ビセンテ&カリュー。
右端はアジャラさんがいかにアンリをうまく止めたかのデータ。



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