第3頁:2003/06〜

好きも嫌いも、好き勝手書いてます。漫画も入ってます。
一応ネタバレ部分は反転してあります。
何か「これを読まないと人生損してる!」というのがあったら
メールフォームかうぇぶ拍手で教えてくださると有り難いです。


『コクトー詩集』 ジャン・コクトー

私の耳は貝の殻
海の響きをなつかしむ 
            (『耳−カンヌ第五』)

嬉しいこともしすぎると、僕らの幸福に傷がつく。
僕の命の蜜蜂よ、どんな悪事を君らはしたか?
君らのうつろな蜜房が、罪の住家である以上、
僕はもう、幸福なんて、希いもしない望みもしない。

            (『嬉しいことも』より)


ふらりと買ってしまったのですが、詩って…いいもんですね…フハハハ…。ニヤニヤしながら詩集なんぞ読んでると周囲から多少引かれそうな気もしないでもないが、落ちぶれはしても文学少女、この言葉の海の向こうに見える光の風景に陶酔せずにはいられようか…(遠い目)
まぁ中にはうっとうしい作品も阿片でラリっててわけわかんない作品もあるんですけど、総じて「詩っていいなぁ」と思いながら読めたのでよかったです。これからしばらく詩を漁ろうかな…(ちょっとそこのひと、卒論!卒論!)

あと自分は寺山修司の詩が好きなんですが、このコクトーの「木は立ったまま眠っている」って…寺山の「一本の樹にも流れている血がある/樹のなかでは血は立ったまま眠っている」は…ここからきてたりするのかな…

日本語訳も自然でいいなぁと思ったんだけど、ときどき訳者の存在感が変に強くて(訳者が勝手に作品の途中に献辞なんか入れていいんだろうか…)雰囲気を台無しにしてたので、普段は本に線を引くのもためらう自分だけど、あえてそういうのは修正テープで消させていただいたりもしました…



『JOJO A−GO!GO!』 荒木飛呂彦

超豪華装丁の箱に入った画集、スタンドカタログ、荒木本(…)の3点セット。内容を知る以前に装丁の遊び心からしてときめきっぱなし。表紙で遊んでるだけで楽しい…。

Disc1、レコードジャケット仕立ての画集を開くと、レコードが鳴り始め、今まで作品に出てきたキャラクターが『Let's Dance!!』と敵も味方もなく踊りだします。…あのー、絵が激しいリズムで踊っているのを見たことがありますか。いえ、踊っている人の絵ではなく、絵がノリノリで踊っているところです。とりあえず、私は今までなかったのでびっくりしました…。BGMはRolling Stonesの「Jampin' Jack Flash」を大音量でかけるのがぴったり、という感じ。あー…ロックだよ、この絵はまぎれもなくロックだよ…。

特に踊るスパイスガールとスティッキーフィンガーズの絡みにめちゃくちゃときめいた。あいつらデキてるよ!ザワールドとキラークイーンもいつそんな仲になったのか知りませんけどエロすぎる…。もうすでにこの描き下ろしだけでノックダウン気味なんですが、これからやっと普通の絵がガンガン始まるわけです。やっぱり大きいので見ると違うなぁ!大胆な構図と色彩の美しさにほれぼれ。ああ、好きな絵をあげるときりがない…。表紙だとこれとかこれとか好きだ…たまらん…かっこいいよ…泣…。そんなこんなで画集だけでも見るのに1時間はかかった…なんだこの充実っぷりは…。

Disc2のスタンドカタログはじっくり見入ってしまった。うーん、多様だ。作者お気に入りスタンドトップ3とか燃えました。わたしもパールジャムほしい。
Disc3荒木本もすっごいおもしろかった。デザイン、サイケデリックでめちゃくちゃ可愛いし。特に冒頭エッセイでのイタリアスケッチに感動…。あれだけでそのうちイタリア本出してもいいんじゃないかなあ…。

6800円は高いと思ってたけど、これならむしろ安いよ…。しかし大きすぎてどの本棚にも入らないんだが…どうしてくれよう…



『生徒諸君!』(全24巻) 庄司陽子 

ああだれかたすけてくれ 涙がでてしまいそうなんだよ

↑少女漫画のこういうひらがなが多くてセンチメンタルなモノローグはたまらない…

最近少年漫画に傾倒してたので、この少女漫画の精神的なエグさがひさしぶりにヒット…。最初は主人公の無鉄砲な明るさが好きになれず「実際いたらまずクラスで嫌われるタイプだよな〜」と思ってたんですが、そのままただの仲良しグループのワイワイ話では終わらず、主人公の悲しい過去をにおわせながら、泥沼一方通行の七角関係をつくりだしていくあたりから超燃えました…。この友情関係、恋愛関係の絡まり具合はほんと鬼気迫るものが。そしてこんなむごい展開フツーするか?というのもバシバシ決めてきて、勇気あるなぁ〜、作者。

それから登場人物も魅力的(結局主人公はあんまり好きになれなかったが…)。特に主人公をとりまく男ふたり、手に入れたいもののためにひたすら自分を鍛えていく岩崎と、自分の気持ちに迷い自問自答を続けながらも優しく見守る沖田のふたりの生き様には泣きました…。あと守兄さんも、覚悟を決めて傷ついた人間を愛する姿はかっこよすぎるよ!結婚きめるの早すぎるけどな!



『ジョジョの奇妙な冒険』(80巻?) 荒木飛呂彦

80冊の感想はとても言えないので簡潔に…
以前、ヴィレッジヴァンガードのPOPに「僕はもう漫画はジョジョだけでいいです」と書いてあるのを見たけど、読んでみてなるほどな!と思った。ほんとに燃えました!ストーリーも絵もキャラクターもカラーの奇抜さも、大胆でほんとにかっこいい…!このかっこよさは、ルネッサンスでありロックでもあるよ…!いろいろと、目からウロコが落ちた気分です。
それに、何もかも濃いのでネタ的に笑えるというのもあるけど、ほんとにおもしろくて、ずーっとニヤニヤしながら(ときに泣きながら)エキセントリックな作者が次々と繰り出す技に陶酔してしまいました。そして「今まで避けてて人生損してた…」としみじみ思った…

コミックスの表紙カバーのコメントですらも妙におもしろいので、ぜひ漫画を未読の方でもこちら(すばらしい情報量…)で読んでみてください…このひとの日記とかもおもしろいだろうな〜と思っていたら、本人曰く、「漫画が日記みたいなもの」らしい…そりゃすごいわ…。そういえばこのコメントの中に「語り部みたいな物語を作りたい」というのがあって、ほんとにそうなんだ!と感動した。読んでるあいだ、自分はすっかり語り部に毎晩お話の続きをねだる子供のような気分でしたよ!わくわくしながら、続きはどうなるの?主人公はその危機をどう切り抜けるの?っていう感じの。

あああでもなんかひとつひとつ感想書きたくなってきたなぁ…!



『白夜』ドストエフスキー

そしてそれからふたりが別れの挨拶をかわしたとき、彼女は私に手を差しのべて、晴ればれとした眼で私の顔を見つめて、こういったーーー
「これからはもうふたりは離れっこなしね、そうじゃありません?」
ああ、ナースチェンカ、ナースチェンカ!私がいまどんな孤独を味わっているか、それが君にわかったならば!



躁病会話が延々と続くドスト流の短編ラブロマンス。
3年前くらいに古本屋で50円で買ったけどそのときは全然読めなくって、こないだ掃除したら出てきた…。薄っぺらいので興奮しながら一気読みできました。たのしい…! 3年前の私はいったい何。
解説やレビューではよく「白夜のペテルブルグを舞台とした夢のように美しい話」「儚く淡い恋物語」などと書かれてますが、私はどっちかってーとそーいうロマンよりも登場人物の精神の強さ、病的な生き様、強烈な思想が印象的でした…やっぱりただのロマンスじゃ終わらないよね…!
そしていちばんおもしろかったのは、極度の興奮状態で、みっともないくらいに己をさらけ出しながら、それでもちょっとは自尊心のために己を偽ったりもする、主役ふたりの会話です。傷ついたり、相手を傷つけたり、傷ついたことを隠したり、傷つけたことに気づいたり。もうその絶妙さがたまらない…。

それから個人的には、失恋云々の経験からナースチェンカのセリフにかなり激しく同意…「もうあんな人はどうでもいいわ!こんなふうにあたしを棄てるんなら、あんな人なんかどうでもいいわ!」とかな…そのへんもリアルさを感じながら痛々しく読めてよかったです…ハハ…泣…。
あと余談ですがBGMをボンジョビの「This ain't a love song」とかそういうベッタベタで大げさな失恋ソングにしたらかなりハマりました。キャー。ドストにボンジョビ、時代を超えたロックなコンビネーション…。でもボンジョビの「Bed of Roses」とか「In These Arms」とか「I Want You」とかそういう陶酔系ラブソングがクサイ歌詞含めて普通に好きなひとはドストのラブロマンスも好きなんじゃないかなーと勝手に思いますよ…いや微妙に違うかな…とにかくボンジョビの「Keep the Faith」と「These Days」は歌詞がクサくても名盤だという話だ…なんだか話がそれたよ…!



『鼻』ニコライ・ゴーゴリ

「だって、あなたは、このわたくしの鼻ではありませんか!」

シュールだ…とってもシュールだ…しかも情景描写や心理描写はやたらとリアルだから、余計に気持ち悪い…
姉の話によるとこれをもとにしたオペラがあるらしい。どうなんだろう。鼻が歌うのかな…。鼻の着ぐるみとか着るのかな…。この話は「言葉だけで済む」という小説の利点を活かしてかなりズルをしてるから、実際に視覚的に表現するとおもしろみが薄れるんじゃないかと思うけど、見てみたいなぁ…。(こわいもの見たさ)

最初いきなりパンの切り口から鼻が出てくるとこで、シュヴァンクマイエルの映画「ファウスト」で「パンの切り口から出てきたたまごを割ったら夜になった」というシーンがあったことを思い出した。なんだかこーいうロシア古典を読むといろいろなものの根源みたいなものを感じます。高村薫の「李歐」も、最初読んだ時は「うわー李歐、幽体離脱してるよ!ヤバいよ!いっちゃってるよこの話!」と驚いたけど、今じゃ「まぁ小説に亡霊、悪霊の類はつきものだしな…」と思う程度です。それもどうか、ですけど…。



『外套』ニコライ・ゴーゴリ

哀れなこの若者は思わず顔をおおった。その後ながい生涯のあいだにも幾度となく、人間の内心にはいかに多くの薄情なものがあり、洗練された教養ある如才なさの中に、しかも、ああ、世間で上品な清廉の士とみなされているような人間の内部にすら、いかに多くの凶悪な野性が潜んでいるかを見て、彼は戦慄を禁じ得なかったものである。

貧困。悲運。無情。見栄。絶望。まぁ、なんて人生のすばらしい部分を切り取ってくれるんだというか…読んでて死にたくなりましたね!(素) ロシア文学万歳!
アニメーション作家のユーリ・ノルシュテインがこの『外套』を何年もかけて、素朴でいながらものすごく美しい、質感までこの手に感じられるような映像に仕上げているのを途中まで見ましたけど(まだ未完成なんです)、あのあとがこんな展開になるとは思いもしなかった…。まぁでもノルシュテインも講演会で人間愛や道徳心について触れてたので、確かにそのテーマにはぴったりな話だけれど…。
アニメの完成が楽しみです。



『貧しきひとびと』ドストエフスキー

「きみのことを思うと、わたしの胸は張りさけんばかりでした! ワーレンカ、きみはなぜそんなに不幸なのでしょうね? わたしの天使さん! きみはいったいどこがあの連中にくらべて劣っているというのでしょう? きみは気だてが優しく、美しくて、学問もあります。それなのに、どうしてきみはそんな不運を背負わねばならないんでしょう? 立派な人が荒野におきざりになっているというのに、別の人には向こうから幸福が飛びこんでくるというのは、いったいどういうわけでしょう?」

ドストさんのデビュー作、極貧の役人マカールとみなしごの少女ワーリャの間の往復書簡形式の小説。こんな手紙が毎日のように送られてきたらかなりうっとうしいよな〜…というような情熱的で芝居口調で突っ走った手紙ばかりです。楽しい。げへへ。
それはともかく、途中に挟まれているワーリャとポクロフスキーのエピソードにすっごい萌えました。家庭教師とか、秘密で本を借りたりとか、でも本を落としちゃったりするのが、もう、少女漫画状態。このきらきらした過去の美しさとどうしようもない運命の悲哀は、ポーの一族みたいだよ。沈丁花にからまったメリーベルの巻き毛をユーシスがほどいてるようなロマンチシズムだよ。そしてたたみかけるように薄幸の文学青年、素直になれない少女、泥だらけになりながら馬車を追って走る父親。あー、ロマンチックが止まらない…!!

でも、そうした悲壮な運命や貧困のつらさはあるものの、悪霊や地下室みたいなものすごい「悪意」はないので、ふつうに美しい小説だなーと思いました。
それに加えてこっそりドスト自身の小説論とか文学批判なんかも入ってて、日常を描いた小説の何がすばらしいのか、小説とは何か、そんなことが登場人物の口を借りて語ってあるのがおもしろかったです。ゴーゴリ『外套』を読んでからの方が楽しめる気もします。主人公の設定(仕事の内容とかも)はすごく似せてるし。でも『外套』の主人公が運命に流されっぱなしなのに対して、マカールは流されつつもその悲哀を全身で叫んでるとことか、ドスト氏は故意に差をつけたんだろうなぁ。

ラストがいいですね〜。(以下ネタバレ?)ラストの後どうなるのかは読んだ人次第っぽくなってますけど、個人的には、最後の手紙は届くことなく、ワーリャはそのまま結婚してしまって離ればなれになると思いました…。もしくは一緒になってもワーリャはすぐに死んでしまって、マカールがひとり残されるっていうのもアリか。あーでも離ればなれになって、そのうえワーリャはすぐに死んじゃうというのがいちばんひどいから(…)そこまでやってこそのドストエフスキーかな…。そもそも私はワーリャは話の間で、結婚前に死ぬと思ってました。それで最後は役人が死んだワーリャに宛てた手紙、みたいなおセンチ風味で終わるのかと。それにくらべたらこの終わり方は素敵だな。



『嵐が丘』エミリー・ブロンテ

「ネリー、あたしはヒースクリフなのよ!彼はいつも、どんな時でもあたしの心にいるの。あたしがいつも自分にとって喜びでないように、あのひとも喜びとしてではなくて、あたし自身としてあたしの心のなかにやどっているの。」

恥ずかしながら私はこの話について「ガラスの仮面」の知識しかなかったため、キャシーとヒースクリフの幼いころの情熱的な純愛がどうのこうのという話なんだろうな〜と思って読んだら、打ちのめされました。比類なきまでの悪意、憎悪、復讐、悪霊のオンパレード。わがままで自意識過剰なキャサリンに、野蛮で卑しいヒースクリフ、どうしようもなく甘やかされて最低なリントン。どうしてここまで嫌な人間のことが書けるんだ…!というほどすごい迫力です、エミリーが。19世紀の女でここまで人間を書きぬく体力精神力があるってほんとにすごいなー。みんな情熱的というよりは、熱病っぽい。「自尊心のつよい人間は自分で悲しみをつくり出してしまうものなのよ」は名言だ。
小説の構造を気にするのも味気ないですけど、一人称はロックウッドだけど物語のほとんどが使用人ネリーによって語られるっていうことは、人物描写にネリーの主観も含まれるわけで(ヒースクリフの話により悪意を込めたりもするわけで)。それは別に無視していいのかな…でも読んでるとときどきロックウッドの一人称を出すのが面倒だったっぽいよな〜。
最近新訳も出たらしいけど、図書館にあったかなり古い訳(工藤昭雄訳)で読んだ。でもキャシーの一人称が「あたし」でちょっとわざとらしいくらいの口調が却って好みだった。



『虐げられた人びと』ドストエフスキー

「あのひとを赦すのがものすごく好きだったのよ」

破滅へまっしぐらの駆け落ちカップルと、それをめぐるひとびとの、愛と赦しのメロドラマ。かなり虐げられてます、みんな。でもそれほど長くないし、難解な思想が入ってたりするわけでもないので、かなり読みやすかったです。とりあえず「罪と罰」よりはとっつきやすい…。ごてごてラブロマンス好きな方はぜひ。
そしていつも通りみんな異常にヒステリックで芝居口調なんですけど、やたらと感動的なシーンが多くしこまれてて、不覚にもついつい涙ぐんでしまうことが多かったです…。興奮状態の盛り上げ方が、ほんと、うまい! ナターシャの焼き絵とかネリーの茶碗とか小物を使った、伏線…というよりシンプルな、約束された感動。グッときた頂点で急に光が開けるような展開。あー痺れる。もう、先生、一生ついていきます!!
それからこれもいつものことなんですけど、登場人物、特に主役級の人たちの人物設定がすごい。全員しっかりした個性や生き様があるんだぜ…!それがうまいこと絡み合っちゃうんだぜ…!みんなほんとに生きてるみたい。個人的にはハイパーヒステリックなナターシャの言動の痛々しさが身につまされるものがありました。ウワー、イタタ。
ラストについてはちょっと語り明かしたい感じです…どうなの…!



『ねじの回転』ヘンリー・ジェイムズ

「先ほどの話は、幽霊かなにかそれらしいものが子供の前に現れたという点で、一風変わった趣きがあるという意見には、ぼくも賛成だ。しかし、こういう魅力的な話で子供が巻き込まれるのは、それほど珍しいわけじゃない。子供がからむので、ねじを普通よりよけいに一回転させるというのなら、子供がふたりの場合はーー?」
「もちろん、二回転になるじゃないか!」


好きな書店のポップで紹介されてたんで、図書館で借りてきました。(ポップに惹かれたなら買ってやれよ…) タイトルからしてちょっと哲学的なサスペンスか…?と勝手に思い込んでいたんですが、なんのことはない、イギリスの古い屋敷のゴシックホラー…。で、私はこういうホラーみたいなの本気で苦手で、映画「アザーズ」ですらトラウマがまだあるくらいなんですけど、最初の書き出しが期待できたのと、途中でやめたらよけい怖いということでなんとか読破。いやー、すっごい怖かったです…
19世紀末のイギリス、田舎の古い屋敷に来た家庭教師が子供たちを守ろうと幽霊と格闘するという、今になるとよくありそうな話なんですが、これがまた、ねじが回転してるだけあって、どうも一筋縄にはいかないらしいんですね〜。解説によるとこの本はいろいろな読み方ができるらしいですけど、愚直なわたしは文面通り、幽霊ものとして読んでました…ワハ…(だって幽霊出てくるシーンほんとに怖いし…疑ってる暇なんてなかったよ…)。
とにかく、幽霊の怖さだけでなく、ふつうに主人公のいうことを信じていたら、途中で誰が正しいのかよくわからなくなってきて別の不安にも襲われるという怖さもあるという、いろんな意味で怖い小説でした…。

他に「デイジー・ミラー」という小説も入ってましたけど、奔放なアメリカと保守的なヨーロッパというテーマはすでに遠い過去の問題のような印象がして、現代に読むとそんなでもない、という感じでした。



『ブエノスアイレス事件』マヌエル・プイグ

「サンタフェやコルドバの干ばつがひどくなりつつあり、このまま雨がふらないと、収穫がだめになってしまうというニュースを、今日新聞で読んで、いい気味だと思いました……乾ききった土はぼろぼろに崩れて、砂のように風で吹き飛ばされ、後には岩や小石の地面しか残らないんです。このニュースを知って、ぼくは喜びました。……誰かの死を望んでいるわけじゃありません。今まで、誰かが苦しめばいいと思ったことはありますが……(ふたたび眼を閉じる)……石がむき出しになったとき、いったい何が起こるか……泣いていたい気分です、一日中。どこへも行かないで、ここで泣いて……自分のためじゃありません。自分のために泣くなんて、とんでもない。これだけは確かです……」

映画「ブエノスアイレス」がこの小説にインスパイアされたと聞いたんで読みました〜。いや、まぁ、後で監督も認めている通り、結果的には全然違うものになってるわけですけど。ただこの小説の中の暑苦しい、閉塞的な雰囲気がそうかと思えばそうかも。
ものすごい変則的な小説で、普通の描写もあれば、ただの簡易書きのメモや脳内インタビューや登場人物の空想の執拗な描写など、表現がバラエティにあふれてます。とりあえず最初の15ページの詩が織り交ぜられた文章はゾクゾクしました。
あ〜、それでこの本は性欲異常者ばっかりでてくるんで長いこと発禁本だったらしいですよ。確かにそんなシーンばっかりだったわ…ワハハ。個人的にも「蜘蛛女のキス」のほうがぶっ飛んでて純愛で好きです。





今後読む予定の本
「未成年」「貧しき人びと」「賭博者」ドストエフスキー
その他卒論用学術書(やばい…!)

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